労災補償制度による補償には、精神的損害(慰謝料)などは含まれません。
この理由から、近年、遺族が会社に過失・安全配慮義務違反があったと考える場合、行政訴訟(労災認定)とは別に、民事訴訟を提起するケースが急増しています。
企業は、リスクマネジメントの重要性についてしっかり認識することが重要です。
損害賠償請求に至ったいくつかの判例をご紹介します。
【概要】
飲食店の店長であるAさんは、長時間労働、過重労働のため、疲労困憊した毎日を送っていました。
しかし、使用者であるB氏は、Aさんの状態を知り得たにもかかわらず、何の措置もとらない上に、売上減少の回復努力、本人の望まない配転命令を課していたのです。
この状況からAさんはうつ病を発症しました。
【裁判の結果】
逸失利益5,312万余円(67歳まで就労可能であることを前提)、死亡慰謝料等2,600万円の支払いを命じました。
【概要】
水道局の職員であるCさんは、課長D氏,係長E氏、主査F氏らから猥雑な話をされたり肥満をからかわれるなど、様々ないじめを受け、統合失調症を発症しました。その後症状は回復せず、自殺未遂を何回か繰り返した後、遺書を残して自殺しました。
【裁判の結果】
被告である川崎市に対し、安全配慮義務違反があったとして、国家賠償法による損害賠償として1,062万円の支払を命じました。
リスクマネジメントを怠ると、巨額の請求だけでなく、キャリアや人材の損失、従業員のモラルの低下、社会的信用の低下といった様々なデメリットが発生します。 使用者は、労働者のメンタルヘルスの状態を常に把握しておくことが大切です。 |
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